感性インタラクション

人間のコミュニケーションは,理論的規則と感性的な仕組みによって成立している.感性の行為であるデザインにおいては,モノとのコミュニケーションをデザインする行為ということができる.従って感性の研究には,インタラクションとしての研究が必要である.

原田は,「人間の行動では,理論的というよりは,感性的側面が強く働いている.にもかかわらず,これまでの技術や自然科学の体系は,“それがどうであるのか”という問いよって成立していた.しかし,デザインや人工物の体系は“それをどうすべきなのか”という問いかけによって成立しているといえる.」と感性におけるインタラクションの重要性を指摘している[註1].

感性インタラクションの研究には,

  1. 感性科学の基礎研究(感性認知モデルと感性は何かという定義についの研究)
  2. インタラクション・デザインプロセス(人間と機械のインタラクションの技術構築における広領域の共同システムによる研究)
  3. インタラクション・シナリオ(人間と機器とのインタラクションを把握するための技術開発の研究)
  4. ユーザビリティ評価(最適なシナリオ設計のための評価技術の研究)
  5. インタラクションの構造化(人間と機器とのインタラクションを如何なる構造として捉えるかについての研究)
  6. インタラクション・プログラミング(人間の振る舞いと機械の応答を実現するためのエージェントプログラミングなどの研究)
  7. マルチメディアと感性インタフェース(ダイナミックビジュアライゼーションなどの表現形式の研究)

について研究が必要であると指摘している.

デザインというインタラクティブなモノとの関係を常に考慮しなければならない行為は,インタラクティブな設計と方法論を持って行う必要がある.

またそこには人の動作・振る舞いが関与することを認識しなければならない.家具のように機能が目に見えて分かる場合と,多機能な情報機器のように機能が目に見えない場合では,インタラクティブな関係も感性の働きも異なる.
人とモノとのやり取りがインタラクティブであるためには,人の動作が必ず入る.人の動作・行動の関係から感性の働きを明らかにすることは有効である.


[1]原田 昭:“感性インタラクション”,「特集 感性工学とは何か」,日本感性工学 学会誌,第1 巻1 号,p66,1998