感性デザインとは,

自分でさえ気づかないような心の働き”を,“デザインというフィルタをとおしてどう操作できるかを考え(=感性操作)”そして“具現化(=デザイン)すること”である.

デザインを知らない場合,分析方法・評価方法ばかりにとらわれてその先が見えない見せないことが多い.
これは感性評価の研究であって感性デザインではない.

「分析・評価結果は分かった,ならばその結果をデザインとして見せてみよ」・・・これに応えることができるのが,デザイン能力である. 分析能力とは異質なのである.
これを混同してはならない.


日々の生活の中でデザインされたものを目にしない日はない.デザインは生活の中では必要不可欠なものとなっている.

では,デザインとはいったい何か.小原は,「デザインは,科学と芸術という人間の中で逆らいあう宿命をデザインという概念のもとにコントロールするものである」とし,「デザインとは,人―モノ の行為をひとつの新しいシステムとして,人は人,モノはモノという別々の立場からではなく,総合的に取り上げようという,新しい人間の行為に他ならない」[註1]としている.

情報機器など新しい技術による新しい製品が矢継ぎ早に出てくる現在,デザインの領域は広がり,認知学,心理学,電子情報工学,機械工学,社会工学,哲学思想など他分野の学問領域の研究を含め,より分かりやすい機器デザインとして,インタフェース・デザインの必要性が多く説かれた.人間に近い会話的なものからアイコンによる視覚的支援によるものなど機械とのインタラクティブな関係をつくることがデザインへの指標となった.

小原がセンスとサイエンスをデザインという概念のもとにコントロールできる,というように,人と機械とのユーザ・インタフェース・デザインでは一方が人である限り感性を考えなければならない

しかし,この感性とは何を指して感性というのであろうか.さらに感性は何によって触発され,何を創造しえるのか.「デザインにおける感性の働き」を明らかにすることはデザインをする上で非常に重要である.

操作性に関わる分かりやすさは,アイコンに代表されるユーザのメンタル・モデルに帰依したオフィスメタファーの導入,あるいはMicrosoft社のOfficeシリーズ(ソフトウェア)で用いられているOfficeアシスタントのように,言語入力を介してダイレクトに文字で答えてくれることによる疑問点の解消法,更にキャラクタを登場させることで言語入力という面倒さを軽減させる方法などによって支援されている.人と機器の関係を人と人の関係に少しでも近づけることで,親しみやすい・分かりやすい機器のデザインとなる.

人と機器との関係のよりよい構築のためには,内部システム,フォルムの外観に関わらず,人が持つ感性が大きく関わっていることとその感性の働きを明らかにしていくべきである.何故なら,人は論理的な手続だけを機器に求めているのではないからである.

人間の感覚器は,五感と呼ばれるように異なった感覚モダリティ(感覚情報処理の様式)を持っており,異なった感覚器官が同じような感じ方をするなど複雑な相互作用によって成り立っているといわれている.人の感覚器官をとおして入ってきた情報は感性の働きによって人は何かを感じ,評価・判断するのである.

近年,ソニーのAIBOに関わるデザインでは動物の動きをデザインするモーションデザインの必要性がクローズアップされた.人の感性へ訴えかけることのできるモノをユーザが望み,その感性とはどういう感性なのかということが注目されたからである.

分かりやすさにせよ,動きにせよ,それらはすべて人の感性へ働きかけ,ユーザはその感性によってデザインの良し悪しの評価・判断材料としている.つまり,言語的・説明的なものから直感的・感性的なものへと評価・判断材料は移り,ユーザの感性にマッチしたものがよりよいものとして受け入れられるのである.

本HPはそのデザインにおける感性の働きを明らかにするしようとする人(感性評価しかできない人ではなく,デザイン[=創造的行為]までできる人)を支援するものである.

[1]小原二郎 編:「デザイン計画の調査・実験」,鳳山社,pp.9-10,1980