新しいデザインイメージを作り出すデザイナーの感性もまた同様に説明しがたいものとして扱われてきた.なぜなら感性は非常に曖昧なもので,それを定量化することは難しいと考えられてきたからである.
感性は,直感的で説明のつかないものであることから,感性情報処理は潜在的メンタル・プロセス(自分では気がつかない無意識的な心の働き)によって処理されると考えられている.
逆に顕在的メンタル・プロセス(自分で意識化して言葉にできる心の働き)によって意識的に処理されるものを知的情報処理という.
この潜在的メンタル・プロセスによって処理されると考えられる感性の働きを明らかにすることができるなら,デザインする上で有効な手段となりうるはずである.
下図は,視覚に限らず人の感覚器を通してインプットされた情報は,潜在的メンタルプロセスによる感性情報処理と顕在的メンタルプロセスによる知的情報処理の相互作用によってデザインという行為を生成しており,波線で示している潜在的メンタルプロセスに焦点をあてた研究が感性デザインの研究であることを示している.
ただし,感性デザインの研究は,感性評価だけに終わってはならない.多くの研究は感性評価だけで創造すること=デザインすることができていない.デザインすることも感性評価をすることも同じだけの比率をもって研究がなされたとき,感性デザインの意味がある.